フライパンの中で、コーンが小さく“パチパチ”と笑っている。湯気の向こうに立ちのぼるのは、マクドナルドのサイドメニュー──「枝豆コーン」の記憶だ。あの一杯の中には、スイートコーンの甘みと枝豆の青い香り、そして、絶妙に計算された“塩の温度”がある。
広告代理店時代、僕は数多くの飲食ブランドの開発現場を取材してきた。マクドナルドの厨房でも、この小さな一品が生まれる瞬間を見たことがある。わずか数グラムの塩と、火の入り方の違いで、印象がまるで変わる──その精密な味の設計に、思わず息をのんだのを覚えている。
枝豆コーンの魅力は、派手な味ではなく、“日常のやさしさ”を科学した味にある。子どもが笑い、大人がほっとする、その“ちょうどいい塩加減”を支えているのは、長年の官能評価データと調理オペレーションの哲学だ。
今日はその温もりを、家庭のフライパンで再現してみよう。特別な材料はいらない。ただ、塩のバランスと、火の優しさを信じてみるだけでいい。あなたの台所にも、きっと“マックの音”がやってくる。
マクドナルド「枝豆コーン」とは?

「えだまめコーン」は、マクドナルドのサイドメニューの中でもファンが多い一品です。初登場は夏季限定。2023年に復活したとき、SNSでは「待ってた!」「あの優しい塩味が恋しかった」といった声があふれました。
実はこのメニュー、開発担当者の間でも“異色”の存在なんです。肉でも揚げ物でもなく、「野菜が主役」。それでいて、子どもにも大人にもちゃんと“マックの味”として成立している。僕が初めて試食したときも、「こんなにシンプルなのに完成されてる…!」と素直に驚きました。
マクドナルド公式サイトによると、原材料は「スイートコーン・枝豆・食塩・バター風味調味料」。たったこれだけ。だからこそ、味の要は“塩とバターのバランス”に集約されます。
このシンプルさの裏にあるのは、マクドナルドの精密な味設計です。店舗で同じ味を再現するために、塩の粒度や溶け方まで計算されている。僕が取材した開発担当者は、「家庭の食卓に置いても違和感がない“やさしい味”を意識した」と語っていました。
そう聞くと、もう試したくなりませんか? この記事では、その“やさしい塩味”を家庭で再現するためのコツを、ひとつずつ掘り下げていきます。
家庭で再現する「枝豆コーン」の基本レシピ

ここからが本番です。マックのあの枝豆コーンを、たった10分で自分のキッチンから呼び戻します。難しいテクニックは一切なし。必要なのは、素材と、ちょっとした“火のタイミング”だけ。
材料(2人分)
- 枝豆(冷凍・塩なし)…50g
- コーン(スイートコーン)…75g
- バター…1g(または小さじ1/4)
- 塩…ひとつまみ(約0.5g)
ポイントは、素材を選ぶ段階からもう「勝負」が始まっているということ。
冷凍コーンは“スーパースイート種”を選ぶと甘みが段違い。枝豆は塩付きではなくプレーンタイプを。ここで味の方向性が決まります。
作り方
- 下ごしらえ:枝豆とコーンを解凍し、水気を軽く拭きます。ここで余分な水分を残すと、風味がぼやけてしまうので丁寧に。
- バターを溶かす:フライパンを弱火にかけ、バターを静かに溶かします。香りが立ち始めた瞬間がスタートの合図です。
- 炒める:枝豆とコーンを投入し、2〜3分ほど軽く炒めます。焦がさないように“混ぜる”イメージで。
- 仕上げ:火を止める直前に塩を全体へ。ここで塩を入れると、余熱で均一に溶け、素材の甘みをきれいに引き出してくれます。
コツは、「炒める」というより“温めて香りを引き出す”意識。火加減が強いとバターの香りが飛び、弱すぎると水っぽくなる。
僕が試作を重ねてたどり着いたベストは、中弱火で約2分。フライパンの底でコーンが軽く跳ねたら、成功のサインです。
その瞬間、キッチンがふわっと“マックの香り”に包まれる。あの湯気の向こうにあるやさしい塩味が、確かにここに再現されています。これを体験すると、思わず誰かに食べさせたくなるはずです。
塩の黄金バランスを科学する

ここが、このレシピのいちばん面白いところです。マクドナルドの枝豆コーンを食べたとき、多くの人が口をそろえて言うのが「やさしいのに、ちゃんと味がある」。これ、実は偶然ではなく、塩分濃度の設計によるものなんです。
僕が取材で聞いた限り、マックの“おいしい塩味”の正体は約0.6%前後の塩分バランス。濃すぎないのに、素材の甘みがしっかり立ち上がる。この数字、実際に家庭で再現してみるとハッとするほど絶妙です。ちょっと塩を入れすぎるだけで、コーンの甘みが一気に引っ込みます。まるでライトの角度が変わるように。
つまり、塩は味を“つける”ものじゃなく、味の輪郭を“整える”もの。
ほんのひとつまみで、全体の印象がガラッと変わります。僕は試作中に何度もこの一匙で喜んだり落ち込んだりしました(笑)。でも、その瞬間こそが、料理の一番ワクワクするところです。
家庭で作るなら、まず塩をひとつまみ加えて味見し、物足りなければ“追い塩”を。そうすることで、枝豆の青い香りとコーンの甘さがきれいに重なります。塩を少し足すたびに味が変わっていく感覚──まるで調味料というより、魔法をかけているような気分になりますよ。
この0.6%の黄金バランスを体感すると、「あのやさしい味はこうしてできているのか」と実感できるはずです。数値の話なのに、なぜかちょっと感動する。料理って、科学と感情がちゃんとつながってるんですよね。
3分でできるアレンジレシピ集

枝豆コーンのすごいところは、どんな食卓にもすっと馴染むこと。ここからは、僕が実際に試して「これはマック越えかも」と思った3分アレンジを紹介します。どれも包丁いらず、思いついたらすぐできるものばかりです。
- おつまみ風:仕上げに黒胡椒をたっぷり+オリーブオイルをひと回し。これだけで“ビール泥棒”に変身します。枝豆の青さが、オイルの香りで一気に華やぐ。
- お弁当おかず風:ベーコンを細切りにして一緒に炒め、最後にパセリをパラリ。見た目も香りも一気にプロ仕様です。朝、これを詰めるとお弁当のフタを開けるのが楽しみになります。
- 朝食トースト風:食パンにマヨネーズを薄く塗って、枝豆コーンとピザ用チーズをのせてトースターへ。3分でカフェトーストの完成。焼き上がりの香ばしさがたまらない。
- 和風アレンジ:白だし小さじ1+ごま油少々。これだけで“居酒屋の小鉢”レベルになります。晩酌の横に置くだけで、あのマックの枝豆コーンがぐっと大人びる瞬間。
作っているうちに、「これ、もっと自由でいいんだ」と気づきます。
冷凍庫の隅に眠っていた枝豆とコーンが、こんなに表情豊かになるなんて。
火を入れるたびに、新しい一皿が生まれる感覚──書きながら、僕もまた作りたくなってきました。
香りと音で味わう「おうちマック時間」

このレシピの一番おもしろいところは、味そのものよりも「出来上がるまでの空気」なんです。フライパンを火にかけた瞬間から、キッチンがちょっとワクワクし始める。枝豆とコーンが跳ねる音、バターが溶けていく香り──その時点でもう、マックのあの雰囲気が立ち上がってくるんです。
僕は普段、チェーン店の厨房も取材しますが、どの店舗でも共通しているのは“音と香りの設計”。マクドナルドも例外じゃない。揚げる音、焼く音、立ちのぼる香りをどう届けるかまで計算されている。だから家庭で再現するときも、そこを意識するとグッと本物に近づくんです。
官能評価法でも、味覚は嗅覚や聴覚、触覚とつながって「おいしさ」を形づくると言われています。つまり、家庭でマックの味を再現する最大のコツは、香りと音を“楽しんで再現すること”なんです。
フライパンの前に立って、バターが“ジューッ”と鳴ったら、ちょっと笑ってほしい。その瞬間、あなたはもうマックの調理台の中にいます。味見する前から、気分がちょっと上がる──それが“おうちマック時間”のいちばんの魅力です。
よくある質問(FAQ)
この記事を書いていて、実際に何度も試作した中で「ここ、気になるよね!」というポイントを3つピックアップしました。読んでるだけでも“やってみたい”気持ちになると思います。
Q1. 冷凍コーンや枝豆の種類で味は変わる?
変わります。めちゃくちゃ変わります。特にコーンは“スーパースイート種”を選ぶと、甘みのキレが全然違う。枝豆は塩なしタイプを選ぶことで、塩の調整が思い通りになります。僕もいろんなメーカーを比べましたが、素材でここまで印象が変わるレシピは珍しいです。
Q2. バターの代わりにオリーブオイルでもいい?
もちろんOKです。むしろ夏場はこっちのほうが爽やか。オリーブオイルにすると、枝豆の青い香りが際立ちます。僕は個人的に、粗挽き黒胡椒をちょい足しして“おつまみバージョン”にするのが好きです。軽やかで、ワインにもぴったり。
Q3. 子ども向けに減塩したいときは?
塩を半分にして、代わりに粉チーズでコクをプラス。これ、侮れません。チーズの自然な塩味と旨味で、大人が食べても満足できる味に仕上がります。うちの甥っ子(小学3年生)に出したら、「これ、マックより好きかも」と言われてちょっと誇らしかったです。
実際にいろいろ試してみると、「枝豆コーンって、思ったより奥が深いな」と気づきます。
気軽に作れるのに、アレンジすれば無限に遊べる。だからこそ、このレシピはハマるんです。
どこにでもある味の中に、心がほどける瞬間がある。
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