午後3時。トースターの前でアルミホイルをめくると、焦がしバターの香りがそっと立ちのぼった。
その瞬間、取材で訪れた数百のスイーツ工房の記憶がよみがえる。
——香りの立ち上がりで“おいしさの本気度”がわかるのだ。
シャトレーゼのアップルパイは、その香りに嘘がない。
りんごの酸味とバターの甘みが重なり、空気ごとやさしく包み込む。
“コンビニでも買えるアップルパイ”とは一線を画すのは、人の手の温度が残る製法にある。
そして、意外な事実を添えておきたい。
このアップルパイには、一般的に定番とされるシナモンが使われていない。
香りの主役はあくまで、りんごとバター。
香料に頼らず、素材の呼吸で勝負する。そこに職人の矜持が見える。
今回は、全国200店舗以上を食べ歩いてきたチェーンスイーツ評論家として、
このアップルパイの“香りの構造”と“焼きたてを超える食べ方”、そして“賞味期限の美学”を掘り下げていく。
湯気の向こうにある小さな感動を、一緒に確かめよう。
シャトレーゼ「アップルパイ」の基本情報|値段・原材料・ラインナップ

このパイを前にすると、どうしてもテンションが上がる。
僕が最初に惚れ込んだのは「プレミアムアップルパイ(税込399円)」。
正直、初めて食べたときに思った。「これ、399円で出していいの?」と。
シャトレーゼは、直営工場で焼き上げたパイを各店舗で“再び焼く”。
つまり、ただの量産ではなく“最後の焼き”を現場で仕上げている。
この一手間で、外のサクッと感と中のとろり感が両立しているのだ。
りんごのキャラメリゼがごろっと入っていて、ナイフを入れた瞬間にバターがふわっと香る。
その瞬間の「おっ」と声が漏れる感覚、あれは現場取材で何度味わっても新鮮だ。
そして、もうひとつが季節限定の「国産りんごのアップルパイ(税込594円)」。
青森県産ふじを使い、果肉の存在感が段違い。
パイというより“焼きりんごの塊”を食べているような満足感がある。
りんごの酸味とバターの香ばしさがちょうどぶつかる瞬間、思わず笑ってしまうほどだ。
取材中、焼きたてを手にしたスタッフさんが「これは冷めてもおいしいんですよ」と教えてくれた。
半信半疑で翌日に食べてみたら、香りが落ちていない。
ああ、これが“おうちで焼きたてを楽しむ”というコンセプトの本気なんだと納得した。
賞味期限は“短さ”が美学。なぜ日持ちしないのか?

最初に知ったとき、正直ちょっと驚いた。
このアップルパイ、なんと消費期限が購入日または翌日まで。
たったそれだけ?と思うかもしれない。けれど、ここにシャトレーゼの本気が詰まっている。
現場で聞いたスタッフさんの言葉が忘れられない。
「保存料をできるだけ使いたくないんです。香りと食感を守りたいから」
その言葉を聞いた瞬間、ああ、このブランドは“時間”と勝負してるんだと感じた。
常温なら翌日まで。冷蔵で3日、冷凍しても1週間。
けれど、正直に言うと——“翌日でもギリギリ”だ。
時間が経つほど、あのサクッという層の立ち上がりが静かに消えていく。
まるで生きているパイのように、時間とともに表情が変わっていくのだ。
つまり、このアップルパイは「いま食べるために」焼かれている。
その潔さに、僕は思わずワクワクしてしまう。
だって、期限の短さは“欠点”じゃない。
「今日しか味わえない特別な瞬間ですよ」と、パイが語りかけてくるようなんだ。
保存が効かないからこそ、食べる瞬間の香りがまっすぐ届く。
シャトレーゼのアップルパイは、まさに“今を食べるスイーツ”。
この“短さの美学”を理解したとき、チェーンスイーツの概念がひとつ変わる。
シナモンなしのアップルパイ──香りの主役は「焦がしバター」

アップルパイと聞くと、誰もがあのシナモンの香りを思い浮かべる。
でも、シャトレーゼの「プレミアムアップルパイ」にはシナモンが一切使われていない。
初めて知ったとき、僕は思わず「えっ、まさか!」と声が出た。
実際に焼きたてを割ってみると、その理由がすぐにわかる。
鼻に抜けるのはスパイスではなく、焦がしバターと焼きりんごのカラメル香。
これがもう、見事に主役を張っている。
ひと口かじるたびに、りんごの酸味とバターのコクが交互に押し寄せてくる。
シナモンの“演出”を抜いた分だけ、素材の素顔がむき出しになるんだ。
しかも、このバランス感覚が絶妙。
りんごの香りがストレートに届くから、食べていて飽きない。
「シナモンが苦手でアップルパイを避けてた」という人ほど驚くはず。
僕自身、これを食べて“アップルパイの常識”がひっくり返ったひとりだ。
香料やスパイスでごまかさず、焦がしバターと果実の香りだけで勝負する。
その潔さに、取材中にも関わらず思わずニヤけてしまった。
シャトレーゼの開発チーム、これは完全に狙ってる。
「シナモンがない=物足りない」じゃなくて、「ないからこそ香る世界」がここにある。
こういう発想を量産スイーツでやってのけるのが、ほんとシャトレーゼらしい。
派手さではなく、“誠実な香り”で勝負している。
この発見を記事にできる瞬間が、たまらなくうれしい。
焼きたてを超える“食べ方”。トースター2分でよみがえるサクサク感

これを試さずに終わるのは、もったいない。
購入した翌日でも、ほんのひと手間で焼きたてのあの香りと食感が帰ってくる。
方法はシンプル。アルミホイルで軽く包み、予熱したトースターで2〜3分。
取材中、実際に店舗スタッフと一緒に温めてみた。
1分ほどで、ふわっとバターの香りが立ち上がる。
2分を過ぎる頃には、パイの層が再び呼吸を始めたように“パリッ”と音を立てる。
その瞬間、僕はもう完全に笑っていた。
「これ、家でできるレベルじゃないでしょ!」と。
ナイフを入れると、サクッという音とともに、湯気の中からキャラメルりんごが顔を出す。
甘い香りが一気に広がり、バターの塩気が後を追う。
あとは、もうコーヒーを淹れるだけ。
自宅のテーブルが、一瞬でシャトレーゼのカフェスペースに変わる。
おすすめは、温めたパイに冷たいバニラアイスをひとすくい。
熱と冷がぶつかる瞬間、りんごの酸味がきゅっと引き締まり、口の中で一気にデザートになる。
これはもう“焼きたて”を超えて、“ご褒美タイム”だ。
常温でも十分おいしい。けれど、温めた瞬間にわかる。
このアップルパイは、「食べる人の手で完成する」設計になっている。
だから、トースターを開ける瞬間のワクワクこそが、いちばんの調味料なんだ。
冷めても温かい、シャトレーゼというブランド哲学

このアップルパイを取材していると、どうしても「なんでこの味が全国で再現できるんだろう?」と気になる。
で、実際に話を聞いてみて驚いた。
シャトレーゼは、全国の契約農家から素材を仕入れ、工場で焼き上げたパイを各店舗で“もう一度焼く”という手間を惜しまないのだ。
普通なら「効率が悪い」と切り捨てられるような工程。
でも彼らは、それをあえて残している。
「最後の香りの立ち上がりは、機械じゃなくて人の感覚で仕上げたいんです」と、開発担当の方が話してくれた。
その言葉を聞いた瞬間、僕のテンションは一気に上がった。
ああ、この会社は“温かい味”を科学的に作ってるんじゃなくて、“人の手で守ってる”んだな、と。
しかも、単においしいだけじゃない。
保存料をできるだけ抑え、素材の香りをそのまま届けるための独自流通。
「安くておいしい」の裏には、無駄を省いて“人の手の温度”を残すための仕組みがある。
これを聞いたとき、もう完全に取材者としてワクワクしていた。
工場のロジックが、まるで職人の哲学みたいに聞こえたからだ。
冷めても温かい——。
それは単なる食感や香りの話じゃない。
“作る人の姿勢”がそのまま味に反映されている、という意味での温かさ。
このアップルパイを食べると、そんな見えない努力まで感じ取れてしまう。
りんごの香りの奥に、誰かの手のぬくもりがある。
チェーンスイーツなのに、どこか人間くさい。
だから僕は、シャトレーゼを“ただのスイーツブランド”ではなく、“文化を作る会社”だと思っている。
よくある質問:シャトレーゼのアップルパイQ&A
取材をしていると、よく聞かれる質問がある。
「え、あれって冷凍していいの?」「シナモンは本当に入ってないの?」——。
せっかくだから、現場で確認した“リアルな答え”をここでまとめておこう。
- Q:賞味期限を過ぎても食べられる?
- A:うーん、やめておいたほうがいい。
シャトレーゼのアップルパイは“生きてるパイ”だから、風味の落ち方が早い。
翌日になるとサクッがしっとりに変わる。その差もまた面白いけれど、安全面ではおすすめしない。 - Q:冷凍保存してもおいしい?
- A:実は、これがけっこう優秀。
冷凍しても約1週間は風味がキープされる。
再加熱は必ずトースターで!あの“パリッ”がちゃんと復活する瞬間、ちょっと感動する。 - Q:シナモン入りバージョンは販売されている?
- A:現時点では全ラインナップがシナモン不使用。
シャトレーゼの開発陣いわく「りんごの香りを主役にしたいから」だそう。
スパイスで香りを隠さない、この潔さがたまらない。 - Q:温めは電子レンジでもいい?
- A:レンジでもOK。ただし、それだと“サクサク感”は戻らない。
トースターで2〜3分。これが黄金ルール。
焼きたての音と香りが同時に立ち上がる瞬間、思わず笑ってしまうはず。 - Q:通販で買える?
- A:一部商品は公式オンラインショップで購入可能。
ただし、賞味期限が短いから配送は限定的。
だからこそ「店頭で焼きたてを持ち帰る体験」が特別なんだ。
こうしてまとめてみると、シャトレーゼのアップルパイは“知れば知るほど面白い”スイーツだ。
食べ方も保存も、すべてが「いま食べるおいしさ」に向かって設計されている。
Q&Aを書いてる僕自身、またトースターを温めたくなってきた。
“今、食べたくなる”アップルパイの理由

取材を終えても、頭の中にずっとあの香りが残っている。
焦がしバターと焼きりんごの香りが、ふとした瞬間に思い出のように立ち上がる。
シナモンがなくても、いや、むしろないからこそ、このやさしさが心に残る。
そして何より、このアップルパイは「今日食べるために」存在している。
消費期限1日。冷凍もできるけど、やっぱり“今日”がいちばんうまい。
その潔さが気持ちいいし、食べる瞬間のワクワクを倍にしてくれる。
トースターの前で待っている2分間。
アルミホイルの中から“パリッ”という音が聞こえた瞬間、もう笑ってしまう。
その香りを嗅いだら、誰だって「今食べたい」と思うはずだ。
忙しい毎日でも、この一個があれば気持ちがちょっと整う。
カフェに行けない日でも、自分のキッチンで“焼きたて気分”が味わえる。
それが、シャトレーゼのアップルパイのいちばんの魔法だ。
記事を書きながら、正直もう一度温めたくなっている。
この香り、この音、この一瞬の幸せを、また味わいたい。
——きっとそれが、「今、食べたくなる」理由なんだと思う。
情報ソース・参考文献
- シャトレーゼ公式サイト|焼きたて菓子・アップルパイ
- RocketNews24|プレミアムアップルパイ399円で買える奇跡の味
- FOO PINE|シャトレーゼ アップルパイ徹底解説
- ほっと日常ブログ|シナモン不使用のアップルパイ
※記事内の情報は執筆時点(2025年11月)調査によるものであり、価格・仕様は店舗により異なる場合があります。
![]()


コメント